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2019年9月19日

第11回 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」

企業存続に避けて通れない

 企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)を避けて通れない。

 「トランスフォーメーション」とは「変形」、つまり形を変えることだ。情報技術(デジタル)を使って企業やビジネスの形を根底から変形させる、というのが本質である。「デジタル」は情報通信技術・製品・サービスのこと。その主役はめまぐるしく進化し、現在はクラウド、AI、ビッグデータ、SNS、スマートフォン、IoT、ロボットが主役だ。企業は「デジタル」を取り入れなくては競争力を失い、脱落する。

 「デジタル」を取り入れると、業務プロセス、取引先との関係、消費者との関係が大きく変わる。DXは従来の経営を支えてきた情報システム(レガシー)とは性質が大きく異なる。情報通信技術は急速に性能を向上させ、情報コストを劇的に低下させたので、効率が低下した「レガシー」を廃止して「デジタル」に置き換える必要がある。

 ただ、現行ビジネスは「レガシー」に依存し、簡単に廃止できないので、効率は悪いが継続使用している。その結果、DXに振り向ける資金も人材も余裕がないのである。

 経済産業省はこのことに注目して、DXの第一歩として、「レガシー」の廃棄に焦点を当ててDX推進のシナリオを作成している。うっかりするとDXとは「レガシー」を廃止すること、と錯覚してしまうほどの熱心さである。

 しかし、本質は「変形」だ。「企業」「ビジネス」「産業」の形の変容である。難しく考えることはない。実は「デジタル技術による変形」はすでに経験済みである。

 業務プロセスの変形は、かつて「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)」と呼ばれて実践されてきた。パソコンとネットによって紙の書類は電子情報に変えられて、処理が大幅に効率化された。人員もコストも削減された。大きく変わった例として、例えば旅行代理店ビジネスが挙げられる。ネットで飛行機やホテルなどを旅行者自身が直接予約できるようになったからだ。このように、パソコンとネットの普及はビジネスを大きく変えた。

 デジタルトランスフォーメーション

 現在進行中のDXはこの延長線上にある。ただし、道具が変わった。前述のように、クラウドやSNS、スマホなどの登場で、情報の入力、流通、加工処理の方法が変わり、企業はこのビジネス基盤の上で新しい姿に変身を遂げなければならない。

 特にスマホの登場は大きい。持ち運べるコンピュータとして社会も仕事も激変させた。若い女性は通勤途上の電車でスマホからファッション製品を注文する。位置情報を自動的に知らせ、タクシーを呼ぶ「ウーバー」や自宅の空き室を利用してもらう「Airbnb」などの新サービスもスマホで花開いた。スマホを利用する「キャッシュレス」は旧来の金融ビジネスを破壊し、大きく変容させる可能性がある。

 クラウドやSNS、AI、スマホ、IoT……。強力なデジタルの道具が企業内の業務プロセスや企業間取引、企業と消費者の関係、つまりビジネスを大きく変える。DXを機に発展するか、新興サービスに取って代わられ、滅びを迎えるか。今がまさに、岐路である。

プロフィール
文=
中島 洋[Nakajima Hiroshi]
株式会社MM総研 特別顧問

1947年生まれ。日本経済新聞社でハイテク分野などを担当。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)では『日経コンピュータ』『日経パソコン』の創刊に関わる。2003年、MM総研の代表取締役所長に就任、2019年7月から同社特別顧問。

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