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アクティブラーニングとは?メリットや導入時のポイントを紹介

2012年の文部科学省中央教育審議会による答申や、2017年に文部科学省から公示されている「新しい学習指導要領の考え方」にも記載されている、新しい学習方法「アクティブラーニング」。主体的・対話的で深い学びが得られるこの学習方法は、まずは大学教育から取り入れられ、現在では高校の教育を中心に小学校や中学校の教育現場にも浸透しつつあります。そこで、今回はアクティブラーニングのメリットや導入時のポイントなどを解説します。
アクティブラーニングとは
アクティブラーニングとは、直訳すると「能動的な学習」という意味です。いわば、学ぶ過程に着目し、生徒が主体的に学ぶ学習方法のことを指しています。能動的な学習といっても、単なるディベート学習や体験学習、グループ学習はアクティブラーニングとは呼びません。あくまで生徒たちが能動的に学習に参加していくことが重視されます。
近年注目されているアクティブラーニングですが、文部科学省の中央教育審議会が2012年8月に発表した「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」という答申で言及されたのが始まりです。タイトルを見ても分かるように、ここで言うアクティブラーニングは大学教育の在り方についてのものでした。
しかし、文部科学省が2017年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」には、アクティブラーニングの視点を取り入れた、幼稚園教育や小・中学校教育における授業の推進や改善について言及しています。そこでは、『「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善を行うことで、学校教育における質の高い学びを実現し、学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすること』と記載されました。
ここでは、アクティブラーニングという用語が使用されなくなっており、「主体的・対話的で深い学び」という表現に置き換えられています。
アクティブラーニングが注目されている背景
アクティブラーニングが注目されている背景は、急速に進んでいるグローバル化や少子高齢化、人口減少など、社会環境や社会構造が大きく変化していることが要因に挙げられます。
これまで日本が得意としてきた「ものづくり」「大量生産」の時代には、指示に対して早く正確に取り組んでいけることが重要とされてきました。
しかしITやAIといった最新テクノロジーがけん引していく時代となり、自由で多様性を持つ教育でないとイノベーションが生み出せなくなっています。
教育には、その人が社会で活動していくための土台づくりだけが必要なのではありません。教育で多様性や創造性といった力をつけることで新しい社会を形づくっていく人材となるよう、教育の質を変えていく必要があるわけです。
アクティブラーニングでは、課題の発見と解決に向け、主体的・協働的に学んでいく学習ができます。子どもたちが将来を生き抜く上で必要となる力を身に付けられることができるようになるわけです。
アクティブラーニングの実施状況は?
2015年10月に株式会社デジタル・ナレッジ「eラーニング戦略研究所」と株式会社Z会ラーニング・テクノロジが小・中・高校教員100名に対して行った「アクティブラーニングに関する意識調査報告書」によると、小学校教員のうち57.1%、中学校教員のうち70.8%がアクティブラーニングの「全学年ほぼ全教科」に導入していると回答しています。
出典:アクティブラーニングに関する意識調査報告書 ※別サイトへ移動します
さらに、株式会社リクルートマーケティングパートナーズが運営するリクルート進学総研が2018年10月に行った調査によると、高校におけるアクティブラーニング型授業の導入率は2014年の47.1%に対し、2018年には90.4%となっています。大半の高校でアクティブラーニング型授業が実施されていることがうかがえます。
出典:9割以上の高校が『アクティブラーニング型授業』を導入「学校全体で導入している」高校が、2014年の3倍以上に増加 ※別サイトへ移動します
また、文部科学省が令和3年3月に公表した「令和2年度学術情報基盤実態調査」によると、令和2年5月1日現在で557大学(69.5%)にアクティブラーニング・スペースが設置されているとしています。
出典:令和2年度学術情報基盤実態調査 ※別サイトへ移動します
このように、アクティブラーニングを実施している小・中学校、高校、大学が着実に増えていることがわかります。
アクティブラーニングのメリット
アクティブラーニングを実施するメリットとしては、以下のことが挙げられます。
協調性が身に付く
従来型の授業は一人で机と向き合いながら行うもので、授業中には他の生徒との関りもあまりありませんでした。しかしアクティブラーニングの場合には、生徒同士で意見交換したり、協力して発表を行ったりします。協力して発表をする場合には、誰に何を任せるかといった役割分担をしないといけませんし、メンバー同士で話し合いながら方向性を決めていく必要があります。他の生徒と積極的に関わって協力しあい、チームとして作業を行う、このような学習方法は、社会に出てからでも、とても重要となってきます。
互いを尊重しあいながらも、ときには意見をぶつけ合い、どのようにすれば解決していくかを考えていくことで、協調性も身に付くようになります。
課題発見力や解決力が付く
従来の授業では、教師が一方的に課題を出し、生徒はそれを解いていくだけでした。しかしアクティブラーニングでは、生徒が自ら課題を発見し、解決するための方法を考えていくことが重視されます。
課題解決の過程で、「なぜうまくいかないのだろう」「どのようにすれば、もっと良い解決方法が見つかるのだろうか」などを考えていくようになります。いわば、ゴールに至る道筋を自ら導き出す力を身に付けられるのです。このようなプロセスを経ることで、社会に出てからも活用できる人材に成長することにつながります。
学習主体性の向上する
席に座って教師の授業を受けているだけの場合、その内容を理解していなくても授業は進んでいきます。対して、与えられたテーマに関して他者と議論したりするような、体験して学んでいくアクティブラーニングは、テーマに対する理解をより深めてくれます。
授業を受けるだけといった受動的な学習手法よりも、自ら体験したり、他の人に教えたり、議論したりといった能動的な学習手法は、学んだことが身に付きやすくなります。他の人の意見を聞くことにより、これまで自身にはなかった価値観や考えを知るようにもなります。
また、生徒たち自身が中心になりながら授業を進めていく学習の仕方は、自然と学習に対する主体性も身についていきます。
アクティブラーニング型授業を導入する際のポイント
アクティブラーニング型授業を導入するにあたって、3つのポイントを押さえておく必要があります。
主体的・対話的で深い学びを前提にする
「主体的な学び」とは、学ぶことに興味や関心を持ちながら、自身が目指すべきキャリアと学習との関連性を意識しつつ学んでいくことを指します。学んだら終わりなのではなく、自身の学習を振り返り、次の学習へとつなげられているか考えることも重要です。
「対話的な学び」とは、生徒同士での対話や、教職員や地域の人と対話などで考察することを指します。それにより、自分の考え方に囚われるのではなく、考えを広げ深めていけるようになります。
「深い学び」とは、学ぶ過程でそれぞれの特性・特質に合わせた見方・考え方を踏まえ、他の知識と関連づけて、さらに学びを深めていくことを指します。多様な社会が求められる時代となった今、明確な答えがない問題が増えており、創造的な学びを深めていくことが重視されます。
これら3つの学びを意識しながら、生徒たちが自ら参加したくなるような能動的な学習方法にしていくことが重要です。
アクティブラーニングの目的を明確にする
グループワークやフィールドワークを積極的に取り入れている学校は多くあります。しかしそれらを取り入れるだけでは主体的に学べません。
例えば、フィールドワークで課外活動中でもスマートフォンをいじるような生徒もいます。複数の生徒と一緒にグループワークを行う場合には雑談が多くなるような生徒も出てきます。それでは、「主体的に学ぶ」といった目的とは正反対のものとなってしまいます。このような現象を防ぐために、生徒たちが学習を楽しめる工夫が大事になってきます。アクティブラーニング型で授業を行うことが目的となってしまうのでは意味がなくなります。アクティブラーニングの本来の目的である「主体的な学び」や「深い学び」をおろそかにしないようにしましょう。
アクティブラーニング型授業の準備を行う
アクティブラーニングは、生徒の主体性を育てていく学習方法です。しかし、なんでも生徒任せにしてはいけません。アクティブラーニング型授業を行う教員自身もその授業の準備を行うべきです。そして、課題の内容は適切なのか、授業時の段取りはどのくらいまで生徒に任せたらいいのかなどを考えながら、教材を作成していきます。
また、教員がその課題を解決する必要性について教えることは、生徒の学習意欲を高めるために必要です。同時に教員には、アクティブラーニング型授業の内容への深い理解が求められます。
アクティブラーニング型授業の3つの種類
アクティブラーニング型授業には大きく分けて、「KP法」「ジグソー法」「学び合い」という3つの種類が存在します。
KP法
「紙芝居プレゼンテーション法」を略したアクティブラーニング型授業の手法がKP法です。授業前に紙の上に授業内容をまとめて、黒板やホワイトボードに貼り付けながら解説をしていくことから、「紙芝居プレゼンテーション」と呼ばれています。
授業前に紙の上に授業内容をまとめておくことで、授業中には教員が板書する時間を減らせることがメリットとなります。その減らした時間は、生徒が考えるための時間や説明時間に充てることができます。
またKP法では、板書にように説明が終わっても消すことがありません。そのため、授業についていけない生徒でも、前後の話のつながりを理解できるといったメリットもあります。
ジグソー法
協働性を高めながら学習を深めていく学習方法がジグソー法です。知識構成型とも言われています。
例えば、3人1組のグループを3グループ作成します。それぞれのグループが別々のことを調べながら、グループ間で協力しながら知識を深めます。その次にグループのメンバーを組み換えます。その際、1つのグループの中に先に作成したグループメンバーが1人ずつ入るようにしていきます。そして、それぞれが集めた情報を交換しあい、調べたことをまとめていきます。最後に全員でクロストークをすることにより、深い学びを得られるようになります。
学び合い
全員が目的を達成できるよう、チームで協力しながら学び合う学習方法を学び合いと呼びます。生徒が主体的に課題を解決に導いていくようにしますので、教師はできるだけ関わらないようにします。そこで、生徒が自ら学ぼうとする姿勢が生まれてくることが、この学び合いでは重要です。
学び合いでは、知識や経験を踏まえて、論理的思考や教養・社会的能力を身に付けていくことができるようになります。予測しないことが起きたときでも、メンバーと協働して最善の策を打ち出せるようになり、社会生活においても汎用的な能力を育むことにつながります。
アクティブラーニングの実施例
アクティブラーニングはさまざまな学校で積極的に導入されています。そこで、生徒たちはどのようにアクティブラーニングを受けているのか、実施例をみていきましょう。
ゲームを用いて、自ら課題を見つけ解決するための力を養う授業を行う
とある小学校では、英語授業のPBL(Project Based Learning/問題解決型学習)をPCゲームとして有名なマインクラフトを用いて行っています。
この授業は生徒が自ら課題を見つけて、解決するための力を養うものです。教師は家の図面を見せ「マインクラフトを使って30分以内で家を作ってください」というだけで、操作方法などは説明しません。
生徒は自ら操作方法を調べたり、他の生徒に教えてもらったりしながら、協力して家を作ります。しかも発言できる言葉は英語のみとしているため、英語の授業になります。
楽しみながら課題を協働で解決していき、英語のスキルも身に付くというアクティブラーニングとなっています。
地域的特色を考察するために行うアクティブラーニング
ある中学校では、地域的特色についての考察をテーマに、アクティブラーニングに取り組みました。同校がある地域には歴史的景観を守りたいという取り組みがある一方で、住民の利便性を考えなければならない面がありました。そこで、さまざまな情報を取得して、生徒たちがこのような社会的事象について話し合い、多面的・多角的に考察する力を育んでいきました。
授業では、「その地域ではどうして歴史的景観を保護しているのか」について予想した上で、資料などで郷土のことを調べていき、自分たちの考えを実証していきます。このような授業を進めていく中で、生徒同士が意見を交流させていく姿が見られ、異なる意見についても理解することにつなげています。そうしていくうちに、郷土の歴史的な背景について考えつつ、「さまざまな立場を持つ人の考え方やさまざまな物事の捉え方も大事だ」ということが自覚できるようになりました。
授業で成果を出すことを目的としたアクティブラーニング
ある高校では、世界史の未履修問題が社会問題になったことをきっかけにして、主体性を育てるアクティブラーニングを取り入れることにしました。同高校ではアクティブラーニング実施の目的として、テストや課題だけに成果を上げるのではなく、授業で成果を出すことを掲げました。
内訳としては、2008年に総合学習として1年間のディベートの時間を設定して、論理的思考を育成しています。さらに、そして、2011年にスーパーサイエンススクールを設置したほか、その翌年には参加型授業をスタートさせています。2013年からは、このような取り組みを一体的に進めていく動きが始まっています。最終的には論理的思考力や発展的対話力、科学的探求力を身につけることを目指しています。
アクティブラーニングを成功させるために
今、学校・教育の現場では、「あたらしい学び」や「ICT化推進」「教職員の働き方改革」など新たな取組みが求められています。
その取り組みの1つにアクティブラーニングがあります。このアクティブラーニングを成功させるには、学校の環境に応じたICT機器の導入が成功の近道です。アクティブラーニングの導入・運用において必要なツールやセキュリティサービスをNECフィールディングでは提供しています。
NECフィールディングでは、学校のICT化を導入前の企画から機器導入、システム構築、運用、保守までワンストップでサポート。現場で抱えるさまざまな課題を、実績と経験をもとに解決へ向けたお手伝いをします。
変化の激しいこれからの未来で活躍する子どもたちはもちろん、「”まなび”の場=学校」の教職員とそれらを支える教育委員会等の学校組織・地域を含めたすべての人に寄り添って、NECフィールディングが環境とサービスを提供します。
まとめ
現在、教育の現場にはアクティブラーニングの実施が求められています。せっかく導入したアクティブラーニングを成功させるには、適切なICT機器の導入が欠かせません。NECフィールディングには、教育現場で求められる学校ICT推進ソリューションを用意しています。現場を熟知したNECフィールディングにより、「新しい学びの場」をまるごとサポートします。
発行元:NECフィールディング
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