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「GPT-4」

最新ITキーワード2023年10月03日

ChatGPTの衝撃、GPT-4でさらに波紋

 昨年11月に米OpenAIが対話型生成AI・ChatGPTを無料で公開すると、わずか5日で利用者が100万人に達し、その内容に驚愕した人々の口コミで、その後2カ月で1億人以上に広がった。変化の速いインターネット業界でもこれほどの爆発的スピードで普及したサービスは例がない。個人情報保護や著作権侵害、雇用への悪影響などが懸念されることから、規制論も持ち上がった。いろいろ不透明なところはあるが、利用メリットも大きいので、まず利用できる分野を確認し、業務改革に利用することが重要だ。

 今年春には性能を飛躍的に向上させた「GPT-4」が登場し、「効果的に業務に取り込む」とする積極派と「規制を強化しないと人類的な危機を招く」などとする慎重派の間で議論はさらにやかましくなっている。

 昨年公表のChatGPTは、テキストで質問すると瞬時に自然な文章の回答を返してくる。応答までの時間の短さと高度な推理機構を使った文章の自然さ、インターネット上の数多くのデータによる内容の豊富さに利用者は驚かされた。

 新たに登場したGPT-4によって、ChatGPTはさらに進化した。テキストだけでなく画像入力も取り扱える、入力できる単語数が従来比10倍以上の2万5000語に増える、専門的な内容に関する文章の生成が正確にできる、などの特徴がある。

 GPTは大規模言語モデルと呼ばれるシステムの一種で、巨大なデータセットと膨大なパラメータをもつディープラーニングモデルだ。GPT-4で能力が飛躍的に向上するのは、その基盤となるデータセットやパラメータの数が飛躍的に増加したことにある。GPT-4のパラメータ数は非公開だが、トークン数(生成する文章に構成する単語や記号の数)は従来と比べて8倍の3万2000強に増える。

「GPT-4」

 希望する要件を入力すれば、短編小説程度なら短時間で制作してくれる。また司法試験に挑戦させたところ、十分に合格できる答案が得られた。試験の解答は既知のデータの組み合わせなので著作権は問題なさそうだが、小説の場合は他人の著作物を無断利用するなどの危険をはらむ。

 業務利用では、大企業や地方自治体で試験的に使用し、企画書の作成や議会の答弁書の作成、プログラムの作成などで効果が出たようだ。ただ、インターネットからデータを集めれば、データに誤りが含まれているリスクがあるため、これをチェックしなければならない。

 かつてインターネットが普及した後、オープンでは危険があるとして「イントラネット」が考案され、クラウドでもパブリッククラウドは不安があるとして「プライベートクラウド」が提案された前例がある。Chat GPTでも信頼できるデータや専門領域だけに絞り込んだデータセットによる「イントラGPT」「プライベートGPT」が必要だろう。

 会議録の文字起こしや総務業務の一部、顧客対応など比較的容易にChatGPTを利用できる領域もあるだろう。人権問題や著作権などに障りがない範囲で活用し、企業競争力を優位に導く必要がある。

プロフィール

文=中島 洋[Nakajima Hiroshi]
株式会社MM総研 特別顧問

1947年生まれ。日本経済新聞社でハイテク分野などを担当。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)では『日経コンピュータ』『日経パソコン』の創刊に関わる。2003年、MM総研の代表取締役所長に就任、2019年7月から同社特別顧問。