2020年8月11日
第14回
プロゴルファー
安田祐香さん
「優勝争いに加わって大会を盛り上げたい」
NEC軽井沢72ゴルフトーナメントに向けて意気込みを語る
若手の女子プロゴルファーの躍進が著しい。特に2000年生まれのミレニアム世代が、畑岡奈紗プロや渋野日向子プロら黄金世代に続く世代として脚光を浴びている。その中でも17歳で日本女子アマチュアゴルフ選手権を制し、アマチュアながら海外メジャー大会に出場し予選通過を果たした経験を持つ安田祐香プロ(NEC所属)が注目されている。ルーキーとして、かつホステスプロとして臨むJLPGAツアー第2戦「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」を前に、安田祐香プロに大会への意気込みなどを聞いた。
坂田塾で毎日400球を打ち込む
――坂田信弘プロが主宰する坂田塾に小学3年生で入塾します。
安田 3歳年上の姉が先に坂田塾に入塾していて、私も練習したいと思い入塾させてもらいました。坂田塾ではゴルフの技術を教えられるよりも先に、挨拶などの礼儀をまず最初に教えられます。小学生の時から礼儀を厳しく教えられたのは、今でも役立っていますね。
小学生の時は、坂田塾でただひたすらたくさんボールを打っていました。毎日練習に通っていましたが、苦に思ったことはないですね。毎日行くものだと単純に思っていたし、毎日ボールを打つのが楽しかったんです。
私の武器はショットだと思っているのですが、それも坂田塾で1日最低で400球、時には500球以上と徹底的に打ち込んだおかげだと思います。それほど坂田塾での練習は厳しかったですね。塾生には同年代の子もいますから、負けたくないという思いで一所懸命でした。男の子も女の子も一緒に練習するので、男の子にも負けたくなかった。塾生の中には、入塾してゴルフを始める子もいますが、私は5歳の時に初めてゴルフクラブを握っているので、塾生になってから始めた子にも負けたくなかったですね。
――最初に競技会に出たのはいつですか。
安田 最初は坂田塾に入る前、小学1年生の時です。それでも同年代の子はいましたし、特に早い方ではないと思います。最初の試合は兵庫県下の地区大会の小学生の部でした。小学5年の時に出た大会で上位入賞でき、翌年には優勝できました。その時から、プロゴルファーになれたらいいなと思っていました。
高校2年生で日本女子アマ優勝
――中学、高校とずっとゴルフですね。全国クラスとなると常連組が占めますね。
安田 中学生になって、全日本クラスのジュニアの大会で上位入賞できるようになりました。その頃から競っていた選手の中にはプロになった人も多くいます。だいたい同じ選手と上位争いになるので、負けた時は悔しかったですね。その後の練習は、いつも以上に真剣でした。それまではあまり悔しいと思ったことはなかったんですが、同じ選手たちで競うようになって負けると悔しかったですね。古江彩佳プロも当時競ったライバルのひとりです。
――古江プロも神戸の出身で、滝川第二高等学校の同級生です。ゴルフに力を入れている高校はいくつかありますが、滝川第二高校を選んだ理由は何ですか。
安田 中学時代に全日本クラスの競技で上位入賞の常連だったおかげで、勧誘を受けた高校もありました。滝川第二高校を選んだのは、やはり自由で自主性を重んじる練習環境だったこと、それと姉も同じ高校に進学していたことが大きいですね。
高校に入っても坂田塾での練習は続けていました。高校2年の時に日本女子アマチュアゴルフ選手権で優勝できましたが、その試合では優勝するとは思っていませんでした。目標としてトップテンに入れればいいかな……と。最終組でもなかったし、試合中に自分の順位も気にしていなかったんです。
――日本女子アマの優勝で、次の目標が見えてきた。
安田 優勝したことでJLPGAのツアー競技にも出場できるようになりました。トッププロに交じってラウンドすることで、自分の足りないところもわかってきたし、はっきりとプロを目指そうと思うようになりました。プロになれば毎週試合があります。その中で戦っていくための準備もしなければならないと気を引き締めました。
日本女子アマで勝ったことで、日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームのメンバーにも選ばれました。チームの練習では、ガレス・ジョーンズHCの指導もあって、ショートゲームに時間を割きました。それまでショットを武器に戦ってきたので、アプローチをあまり重視していませんでした。ショットで確実にグリーンをとらえることばかり考えていたんです。
でも、いつもパーオンするわけではなく、グリーンを外した時のリカバリーに失敗してボギーを打つことが多かった。ナショナルチームでショートゲームに練習時間を割くようになったことで、私の考え方も変わりました。課題はショートゲームの精度向上にあるので、今もアプローチの練習には力を入れています。
海外の大会でトッププロのすごさを実感
――ナショナルチームでの活躍で世界への道も開けましたね。
安田 2019年4月にはマスターズゴルフトーナメントが開催されるオーガスタナショナルGCでアマチュア女子の世界大会が開かれ出場しました。オーガスタナショナルで女性がプレーするのは初めてですし、出たくでもなかなか出られない大会。成績は別にして楽しんでこようと思って出場しました。
その後、日本で開催されたアジア・パシフィック女子アマでも勝つことができて、フランスで行われるエビアン選手権とAIG全英女子オープンに出場しました。両方ともメジャー大会ですが、特に緊張はしませんでしたね。幸い両方とも予選を通過して決勝に出場でき、エビアン選手権ではローアマを取れたのはとても嬉しかったです。世界のトッププロが集まるメジャー大会に出場し、タフなセッティングでプレーしてみて、世界のトッププロがどれだけすごいのかがはっきりとわかりました。
――2019年度のプロテストに一発合格し、JLPGA92期生として会員になりました。ルーキーイヤーで期するところもあったと思いますが、残念なことに新型コロナウイルス感染拡大で軒並みツアー競技が中止になってしまいました。
安田 プロ1年目でこういう状況になってしまったのは残念ですが、これも得難い経験だとプラス方向で考えたいですね。試合がないことでモチベーションを維持するのは苦労しますが、その分トレーニングに時間をかけることができます。あまり練習量が多い方ではないので球を打つ練習の時間は長くありませんが、プロのツアー競技で毎週転戦するための体力作りや、腰の周りの筋肉の強化や上手く使えていない筋肉を動かすためのトレーニングを続けています。
ホステスプロとしてNEC軽井沢72に
――2020年のツアー競技初戦として6月25日からアースモンダミンカップが開催されました。
安田 最終結果は28位タイでしたが、1日目の失敗を2日目でリカバリーできたこと、3日目は68といいスコアで回れたことがよかったと思います。最終日のバックナインで2つも3パットしてしまったのは残念ですが……。
私自身はあまり失敗を引きずらないタイプなんです。ゴルフはミスのスポーツといわれるくらいで、1ラウンドで何度かミスをしてしまうもの。いつまでも1度のミスを悔やんでも、何もプラスにはなりません。大事なのは同じ失敗を繰り返さないことですね。
ミスを繰り返さなければビッグスコアも可能ですし、同じミスを繰り返せばスコアは伸びません。私もミスをしたときは、あまりくよくよしないことにしています。たまには「これでもプロかよ」と我ながら呆れることもないとはいえませんが(笑)。
――第2戦はホステスプロとして臨むNEC軽井沢72ゴルフトーナメントです。
安田 ルーキーイヤーの2戦目にホステスプロとして臨むというのも、なかなかできない経験だと前向きに考えています。緊張するかもしれませんね(笑)。
この大会で私ができることは優勝争いに加わって大会を盛り上げること。無観客試合なのでギャラリーの皆さんから拍手をもらうことができませんが、いつも通りのプレーができるように念入りに準備しています。
コースは昨年アマチュア時代にプレーして知っています。バーディを取らなければ上位進出できないタフで難しいコース。ティーショットでフェアウェーをキープして、得意のショットでバーディーチャンスにつけられると思うので、優勝目指して楽しんでプレーしたいですね。
――今後の目標を教えてください。
安田 これからプロとして長くキャリアを積んでいくことになります。もちろん毎試合優勝を目指して臨みますが、まずは1勝して、常に上位をキープするトッププロの仲間入りをしたいですね。目指すのは賞金女王ということもありますが、予選落ちをせず安定して成績を残せて、長く活躍できるプロになりたいと思っています。
昨年、エビアン選手権とAIG全英女子オープンに出場できたことで、海外のツアー競技にも照準を合わせていきたい。両試合を経験して、海外で戦うことは自分のゴルフを高めることができると感じました。
例えば1年でも海外を転戦すれば、その後で日本ツアーに復帰しても生かせるものを多く得ることができるはずです。そのためにまず国内ツアーで常に上位に入り、女子プロゴルファーの世界ランキング「ROLEXランキング」の順位を上げて、海外ツアー競技の参加資格を得ることが目標です。

写真提供:東急エージェンシープロミックス
安田さんがホステスプロとして臨むJLPGAツアー「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の詳細はこちら
撮影:清水タケシ
撮影協力:日経BPコンサルティング
記事中の意見・見解はNECフィールディング株式会社のそれとは必ずしも合致するものではありません