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トレンド最前線

笹谷秀光 氏

第4回 特別コラム
SDGsの動向について
『後編』SDGs経営の基本(現代版「三方良し経営」とは)

千葉商科大学基盤教育機構・教授、博士(政策研究)
CSR/SDGsコンサルタント 笹谷秀光 氏

SDGs経営

 SDGsは、幅広く、経済・社会・環境の課題をカバーしているので、企業経営に直結する。SDGsの17目標のカバー範囲は極めて広い。企業統治や環境課題への対応のみならず、働き方改革、採用、ブランディング、地域社会など幅広くカバーしている。SDGsに関心の高いミレニアル世代の消費者への対応やグローバルなリスク管理にも必須だ。

 また、投資家もESG投資の中で、SDGsの実践を求めている。まさに、SDGsは経営要素のすべてに絡むので、社内全部署に関連し、経営トップも重大な関心を寄せる経営マターになったのである。

 日本には和の精神があるので、目標17「パートナーシップ」も根づいている。SDGsを加速させるポテンシャルはきわめて高い。

 では、そのポテンシャルを発揮するためには何が必要か?

 近江商人の経営理念である「三方良し」(自分良し、相手良し、世間良し)がわかりやすい。「世間」の課題が、今はSDGsだと考えればよい。

 ただし、そこには一つ補正が必要だ。「隠徳善事」という言葉があるように、日本企業は、「人知れず社会に貢献しても、わかる人にはわかる」と考え、あえてみずから発信しないことが多かった。しかし、グローバル社会ではとても通用しない。

 そこで、筆者は「発信型三方良し」を提唱しており、これをSDGs化していくのである。それが、現代版「三方良し経営」である。

SDGsの動向について(後編)

SDGsを経営に実装する

 SDGsを経営に実装するとは、SDGsを経営に導入し、使いこなすという意味だ。SDGsを企業に導入するための指針として、「SDGコンパス」がある。この指針は、大きな多国籍企業に焦点を当てて開発されたが、中小企業やその他の組織も、カスタマイズして使うことができる。

 また、企業全体のビジネスモデルへの適用も可能であり、個々の製品や拠点、部門レベルなどにも活用できる。

 「SDGコンパス」には、STEP 1:SDGsを理解する、STEP 2:優先課題を決定する、STEP 3:目標を設定する、STEP 4:経営へ統合する(統合とは「組み込む」の意)、STEP S5:報告とコミュニケーションを行う次の5つのステップが示されている。

 以上のステップを踏んで、SDGsを実装している経営、「SDGs経営」を推進するべきだ。

 その際重要なことは、SDGsは自主的取り組みが基本である、という点だ。地球規模の危機的状況に向けて、やれる人がやれるところからすぐにも着手しようというルールである。このルールは怖い。どんどん差がつくからだ。悠長に構えていると置いていかれる。日本が欧米に置いていかれる、日本でもSDGs仲間から置いていかれる。ルールが変わったのである。横並び思考や「護送船団行政」の残影から抜け出して、すぐにも自社は何をすべきか考えなければいけない。

SDGsの規定演技と自由演技

 そして、重要なことは、共通言語であるSDGsを使い、活動による価値創造のストーリーを「統合報告書」などで効果的に内外に発信することだ。

 SDGsに基づく優先課題を決めるには、まず自社の経営体系にSDGsを当てはめる。横軸に企業にとっての重要度、縦軸に社会にとって重要度を示す2軸で項目をマッピングする「マテリアリティ」(経営の重要事項)の選定という方法がある。

 この方法では、企業は広範な活動を行っているのでSDGsのマークが次々に並ぶ状況になってしまい、マテリアリティが見えにくい。そこで、SDGsと経営の関係を鳥瞰できる手法として、筆者が企業向けに開発した「ESG/SDGsマトリックス」(笹谷マトリックス)という手法をご紹介しておく。

 これは、ISO26000「社会的責任の手引き」という国際標準を使うところが特色である。この手引きは、組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ課題の7つの中核主題を示している。これらを最近重要なESGに当てはめる。

 このESG整理による7つをマトリックスの縦軸に置き、横軸にはSDGsの17目標を置く。そして、7つの中核主題の各項目を実践すると、どのSDGsに貢献するかを「●」で示していく。できれば、SDGsについてはターゲットレベルまで整理を行うことが効果的だ。

 このように、SDGsという世界共通言語で客観的に自社を分析することにより、強みを高める要素を再認識したり、劣った部分を改善することが可能だ。

 SDGsは、フィギュアスケートに例えれば、まずは規定演技(ショート・プログラム)としてSDGsを当てはめた上で、次には、自社の個性は何か、強みは何かを考え、自由演技(フリー・プログラム)をしなければならない。ただし、自由演技はできるが規定演技はできないというわけにはいかない。

 そして自由演技にあたって世界の共通言語であるSDGsを使えば光るのである。これまで様々な取り組みについて日本語でいろいろ発信してきたと思うが、世界共通の言語を使えば格段に伝わりやすい。

 今後は、「顔の見える」連携を通じて、企業・自治体がSDGsを実践していくことが重要である。

 ジャパンSDGsアワードなども参照して、早急に自社のSDGs経営を確立すべきだ。

SDGs経営の基本(後編)

――(前編)最新のトレンド・日本の進捗状況等――

プロフィール
笹谷秀光(ささや・ひでみつ)氏

プロフィール笹谷秀光さん

1976年東京大学法学部卒業。77年農林水産省入省。農林水産省大臣官房審議官等を経て2008年退官。同年、株式会社伊藤園に入社、取締役等を経て19年退職。20年4月より現職。
文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員、未来まちづくりフォーラム実行委員長。主な著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)、『3ステップで学ぶ自治体SDGs』全3巻(ぎょうせい)。
〇笹谷秀光・公式サイト:https://csrsdg.com/

*近著
『Q&A SDGs経営』
笹谷秀光 著
日本経済新聞出版社

SDGsはなぜ必要か? どこから手をつければいいのか?関西・大阪万博に向けて、SDGs対応がビジネス常識になることを解説

『Q&A SDGs経営』

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