フィールディングEyeNECフィールディングがお届けする百花繚乱のコラム集

トレンド最前線

2022年3月18日

笹谷秀光 氏

第3回 特別コラム
SDGsの動向について
『前編』最新のトレンド・日本の進捗状況等

千葉商科大学基盤教育機構・教授、博士(政策研究)
CSR/SDGsコンサルタント 笹谷秀光 氏

脱炭素時代の到来と世界の羅針盤SDGs

 カーボン・ニュートラル時代に入った。イギリスで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組み条約締結国会議)で決定された「グラスゴー気候合意」の目標を実現するには、対応の急加速が求められている。

 カーボン・ニュートラルに関連するSDGsのゴールをスラスラと言えるようでなければビジネスパーソンとして対応できない時代になった。

 ゴール13「気候変動に具体的な対策を」はもちろん、ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や森林吸収減に関係するゴール15「陸の豊かさを守ろう」などだ。そして、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)を含む日本の技術力に期待されるゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を忘れてはいけない。

 昨今、「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)という言葉を聞かない日はなくなった。象徴的なのは、「現代用語の基礎知識」選の「ユーキャン新語・流行語大賞」(第38回)で 2021年ノミネート語30選の一角に「SDGs」が入ったり、電通の調査によれば国民全体の認知度が54%になったことだ。

 しかし、今や認知度ではなく理解度が課題だ。

 SDGsは、2015年の「国連持続可能な開発サミット」において、世界193カ国の合意のもとに策定された、2030年に向けた17の目標から成る持続可能な社会づくりの指針だ。合意文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれたもので、2030年を目標年次にして、持続可能な社会づくりを目指す。

 そして国連加盟193カ国全員の合意でできた。だからこそ、SDGsは、世界の共通言語であり「羅針盤」のような役割を果たすものなのだ。

日本の順位18位の理解:人口1億人以上では1位

 世界では、SDGsができた2015年9月以降、直ちにその活用が始まった。例えば、スウェーデンのレジリエンスセンターでは、2016年に有名になったウェディングケーキモデルを示した。

 この整理の仕方には議論があると思うが、筆者としては、自分ならこう考えるという「自分こと化」して示したことに大きな意味があると考えている。

 SDGsの国別達成順位は、最新の2021調査結果では、日本は調査対象165カ国中18位である。これを聞いてやっぱり日本はだめかという反応が多い。

 1位から3位までがフィンランド、スウェーデン、デンマークの北欧諸国、続いてドイツ、ベルギー、8位にフランス、以下17位のイギリスまですべて欧州勢である。18位に初めて欧州以外の日本が入り、ちなみに米国32位、中国57位である。

出典:Sustainable Development Solutions Network (SDSN) and the Bertelsmann Stiftung - Sustainable Development Report 2021

 よく見ると、独、仏、英には抜かれているが、人口1億人以上では日本が1位だ。

 実は、日本はSDGs目標のうちジェンダー平等、気候変動などで課題を残すが、他は非常に頑張っている。特にSDGs目標9の技術や目標4の教育が世界的にも評価が高い。内容をよく分析すべきだ。

日本政府の動きと企業の役割

 政府はSDGsを推進するために、全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を2016年につくり、SDGsの重点分野を、①Society5.0、②地方創生、③次世代・女性活躍、の3つに定めた(さらに新型コロナへの対応が加わった)。政府はSDGsの推進を呼びかけ、最近では、企業や自治体に広がり、ますます「主流化」している。

 世界ランク18位の日本は、「課題先進国」であるが、課題解決力も備えている。途上国には17目標のほとんどが未達成の国が多いので、日本企業の高い技術力と商品開発力が、世界から期待されている。

CSVの実践としてのSDGs経営

 企業によるSDGs活用では、社会課題解決と経済価値の同時実現を狙うマイケル・ポーターが2011年に提唱した“Creating Shared Value”(CSV:共通価値の創造)の考え方をうまく取り入れ、本業を活用することが重要だ。

 CSVで目指す社会課題がSDGsであると理解することで課題が客観化し、説得性も高まる。このようにCSVの実践にSDGsを活用できる。これが企業SDGsの要諦である。

 これからは自治体、企業、その他の関係者の間で「SDGs仲間」がどんどん生まれてくると思う。自治体が企業と連携する場合に、企業の「共通価値創造力」を引き出して活動に参加してもらう必要がある。自治体の目標と企業の関心との間でウィン・ウィン関係をつくっていくのである。

 SDGsを盛り込んだ国連の2030アジェンダの文書の題名に「我々の世界を変革する」とある通り、SDGs の実践は社内外に変革をもたらす。

SDGsの動向について(前編)

――(後編につづく)――
【後編】SDGs経営の基本(現代版「三方良し経営」とは)

プロフィール
笹谷秀光(ささや・ひでみつ)氏

プロフィール笹谷秀光さん

1976年東京大学法学部卒業。77年農林水産省入省。農林水産省大臣官房審議官等を経て2008年退官。同年、株式会社伊藤園に入社、取締役等を経て19年退職。20年4月より現職。
文部科学省青少年の体験活動推進企業表彰審査委員、未来まちづくりフォーラム実行委員長。主な著書『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社)、『3ステップで学ぶ自治体SDGs』全3巻(ぎょうせい)。
〇笹谷秀光・公式サイト:https://csrsdg.com/

*近著
『Q&A SDGs経営』
笹谷秀光 著
日本経済新聞出版社

SDGsはなぜ必要か? どこから手をつければいいのか?関西・大阪万博に向けて、SDGs対応がビジネス常識になることを解説

『Q&A SDGs経営』

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