脱炭素時代の到来と世界の羅針盤SDGs
カーボン・ニュートラル時代に入った。イギリスで開かれていたCOP26(国連気候変動枠組み条約締結国会議)で決定された「グラスゴー気候合意」の目標を実現するには、対応の急加速が求められている。
カーボン・ニュートラルに関連するSDGsのゴールをスラスラと言えるようでなければビジネスパーソンとして対応できない時代になった。
ゴール13「気候変動に具体的な対策を」はもちろん、ゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や森林吸収減に関係するゴール15「陸の豊かさを守ろう」などだ。そして、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)を含む日本の技術力に期待されるゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を忘れてはいけない。
昨今、「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)という言葉を聞かない日はなくなった。象徴的なのは、「現代用語の基礎知識」選の「ユーキャン新語・流行語大賞」(第38回)で 2021年ノミネート語30選の一角に「SDGs」が入ったり、電通の調査によれば国民全体の認知度が54%になったことだ。
しかし、今や認知度ではなく理解度が課題だ。
SDGsは、2015年の「国連持続可能な開発サミット」において、世界193カ国の合意のもとに策定された、2030年に向けた17の目標から成る持続可能な社会づくりの指針だ。合意文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれたもので、2030年を目標年次にして、持続可能な社会づくりを目指す。
そして国連加盟193カ国全員の合意でできた。だからこそ、SDGsは、世界の共通言語であり「羅針盤」のような役割を果たすものなのだ。
日本の順位18位の理解:人口1億人以上では1位
世界では、SDGsができた2015年9月以降、直ちにその活用が始まった。例えば、スウェーデンのレジリエンスセンターでは、2016年に有名になったウェディングケーキモデルを示した。
この整理の仕方には議論があると思うが、筆者としては、自分ならこう考えるという「自分こと化」して示したことに大きな意味があると考えている。
SDGsの国別達成順位は、最新の2021調査結果では、日本は調査対象165カ国中18位である。これを聞いてやっぱり日本はだめかという反応が多い。
1位から3位までがフィンランド、スウェーデン、デンマークの北欧諸国、続いてドイツ、ベルギー、8位にフランス、以下17位のイギリスまですべて欧州勢である。18位に初めて欧州以外の日本が入り、ちなみに米国32位、中国57位である。
出典:Sustainable Development Solutions Network (SDSN) and the Bertelsmann Stiftung - Sustainable Development Report 2021
よく見ると、独、仏、英には抜かれているが、人口1億人以上では日本が1位だ。
実は、日本はSDGs目標のうちジェンダー平等、気候変動などで課題を残すが、他は非常に頑張っている。特にSDGs目標9の技術や目標4の教育が世界的にも評価が高い。内容をよく分析すべきだ。
日本政府の動きと企業の役割
政府はSDGsを推進するために、全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」を2016年につくり、SDGsの重点分野を、①Society5.0、②地方創生、③次世代・女性活躍、の3つに定めた(さらに新型コロナへの対応が加わった)。政府はSDGsの推進を呼びかけ、最近では、企業や自治体に広がり、ますます「主流化」している。
世界ランク18位の日本は、「課題先進国」であるが、課題解決力も備えている。途上国には17目標のほとんどが未達成の国が多いので、日本企業の高い技術力と商品開発力が、世界から期待されている。
CSVの実践としてのSDGs経営
企業によるSDGs活用では、社会課題解決と経済価値の同時実現を狙うマイケル・ポーターが2011年に提唱した“Creating Shared Value”(CSV:共通価値の創造)の考え方をうまく取り入れ、本業を活用することが重要だ。
CSVで目指す社会課題がSDGsであると理解することで課題が客観化し、説得性も高まる。このようにCSVの実践にSDGsを活用できる。これが企業SDGsの要諦である。
これからは自治体、企業、その他の関係者の間で「SDGs仲間」がどんどん生まれてくると思う。自治体が企業と連携する場合に、企業の「共通価値創造力」を引き出して活動に参加してもらう必要がある。自治体の目標と企業の関心との間でウィン・ウィン関係をつくっていくのである。
SDGsを盛り込んだ国連の2030アジェンダの文書の題名に「我々の世界を変革する」とある通り、SDGs の実践は社内外に変革をもたらす。
――(後編につづく)――
【後編】SDGs経営の基本(現代版「三方良し経営」とは)