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2020年04月08日

スマートグラス

第16回 「スマートグラス」

 「スマートグラス」とは、頭部に装着して使用するメガネ型のウェアラブル端末(身体に装着して利用する端末)のことをいう。実際に目で見ている光景に情報を重ねて表示するディスプレイを通じて、動画視聴や遠隔地との情報の送受信といったさまざまな機能を使用することができる。

 SF映画やアニメでは昔から登場していた定番のアイテムなので、それをイメージすれば分かりやすいだろう。企業からは、さまざまなビジネスシーンでの活用が期待されており、開発・導入が進められている。

 なお、近い言葉に「ARグラス」というものがある。ARとは「Augmented Reality」の略で、日本語では拡張現実という。

 周囲の現実世界(空間)を認識し、そこにデジタル情報を重ねる技術のことで、例えば目の前にある机の上に仮想の物体を表示させたりすることができる。

 このARグラスとスマートグラスが同一のものとして扱われているケースもあるが、スマートグラスにはAR機能がない製品もあるため注意したい。

スマートグラスの機能例

 それでは、スマートグラスでできることの例を挙げていこう。現状、スマートグラスは製品によって利用できる機能が異なるため、目的に応じたものを選ぶようにしたい。

  • ①動画の視聴

     スマートフォンやPCと接続することで、その中にある動画コンテンツを投影する。視界の中に仮想的な画面が浮かび上がり、場所を問わず大画面で動画を視聴することができる。また、スマートグラスを装着している本人以外に画面が見えることもない。

  • ②写真、動画の撮影

     スマートグラスに搭載されているカメラとアプリケーションを使って、今自分が見ているものを写真・動画として撮影することができる。写真の場合は、「目を閉じる」「コマンドを音声で発する」といった行動で、撮影が行われる。

  • ③画面共有

     撮影するだけではなく、今自分が見ているものを映像としてリアルタイムで共有することができる製品もある。現場の作業状況を本社で確認して指示を送るなど、主にビジネス向けに活用されている機能である。

  • ④通話

     マイクとスピーカが搭載されている製品なら、ビデオまたは音声による通話が可能だ。骨伝導スピーカを採用しているものもある。

  • ⑤運動データの記録

     ランニング、サイクリングといったスポーツ向けの製品にある機能。各種センサーによって速度、距離、心拍数など様々なデータが記録され、視界にそれが表示される。

     同じ機能があっても腕や車体にとりつける必要がある機械の場合、毎回機械の位置に視線を移してデータを確認しないといけないが、スマートグラスの場合は正面を向いたまま確認できるため、利便性が高い。

  • ⑥地図とナビゲーション

     AR機能を使って地図表示や行き先へのナビゲーションを行う。例えば目的地を設定すると、走っている道の上に走行ルートが表示されたりする、といった形だ。

  • ⑦翻訳

     音声をリアルタイムで認識し、字幕を表示する機能。観光地でのインバウンド対応など、ビジネス向けでの活用が期待されている。

スマートグラスの構成

一般普及への課題点

 冒頭で、スマートグラスは企業からさまざまなビジネスシーンでの活用が期待されていると述べたが、逆に一般への浸透はあまり進んでいない。

 スマートグラスの先駆けとなった米グーグル社の「Google Glass」も一般向け販売を2015年に中止し、現在はビジネス向け製品として開発が進められているという状況だ。

 これには、次のような課題点がある。

  • ①価格の高さ

     最先端のデバイスであるだけに仕方のないことだが、やはり価格の高さはネックになる。
     例えば、先のグーグルグラスの一般販売価格(2014年)は、当時1,500ドルだった。現在は1~2万円程度の製品もあるが、そういうタイプは機能が少なく、例えばスポーツ向けに特化していたりする。

  • ②デザインと重量

     iPhoneに代表されるスマートフォンがそうであったように、一般に大きく普及させるためには「デザインの良さ」も必須になるが、この点もまだまだだろう。
     例えば、メガネの「つる」にあたる部分がセンサーや内蔵機器のために非常に大きくなっていたり、メガネというよりはゴーグルにしか見えなかったりする。また、当然ながら普通のメガネよりも重いため、軽量化も課題となる。
     徐々にスリムで軽い製品も出てきているため、今後の展開に期待したいところだ。

  • ③スマートフォンなどである程度代替できる

     先に挙げた機能の多くは、スマートフォンやタブレット端末でも使うことができる。これらと違ってハンズフリーになるという独自の利点はあるものの、一般層にとって価格を上回るほどのメリットになるかというと、難しいだろう。
     開発途上のスマートグラスと市場が成熟しているスマートフォンで比較するのは酷だが、追加できるアプリケーションの多様性にも大きな差がある。

  • ④プライバシー侵害の懸念

     Google Glassで問題になったのが、プライバシーに関する点である。他人に気づかれず写真撮影をしたり、会話を録音したりするのではないか、という懸念の声が上げられている。
     Google社も「顔認識機能を搭載しない」「ユーザ向けに注意喚起をする」といった対応は行ったものの、完全な解決には至らなかった。

ビジネスにおける活用例

 一方、ビジネスにおいては見た目をあまり気にする必要がなく、業務用機器と考えれば価格もそこまで高いものではない。

 よって、ハンズフリーで作業ができるといったスマートグラスならではのメリットのほうが大きく、これを活用することによる業務効率化や働き方改革などが注目されている。そのひとつが「遠隔支援(後方支援)」だ。

 例えば、クライアント先のIT機器の保守を行うにあたり、現場の作業員を遠隔拠点にいる人間がサポートするといった形である。

 作業員がスマートグラスを装着して作業を行うと、その映像がリアルタイムで遠隔拠点のパソコンに共有される。遠隔拠点の人間はそれで進捗状況を把握し、作業手順などを随時音声やテキストで指示するという流れだ。

 仮にスマートフォンで同じことを行おうとすると、スマートフォンを一々手に取って撮影したり、メールなどを確認したりしなければならないが、スマートグラスなら全てをハンズフリーで行え、指示のテキストやマニュアルも視界に表示させることができるため、作業効率や生産性の向上が大きく期待できる。

 作業員の視界が常に共有されるため、状況や指示が相手に伝わらない、といったことなども起こりにくいだろう。

 現場に赴く人員が経験不足の場合、マニュアルの確認などに追われて作業時間が非常にかかったり、ミスによる損害を引き起こしたりする恐れがあるが、遠隔拠点にいる熟練者が支援を行えばリスクを最小限に抑えることができる。作業員による作業品質のバラつき対策にもなるだろう。

 逆に、熟練者が現場で作業を行う場合は、スマートグラスでそれを映像として記録することで、教育用ツールとして活用することもできる。熟練者の定年による退職などで、その技術が継承されず失われてしまうといったこともなくなるわけだ。「この作業はこの人しかできない」という属人化対策にもなる。

 また、障害が発生した際、通常は技術者が現場に行く必要があったが、遠隔地からの指示で復旧対応が可能になるケースも考えられる。移動のためのコスト・時間が削減でき、復旧時間も大幅に短縮できる。

この記事は2020年04月08日時点のものです。

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