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5分で解説!気になるIT用語

2019年11月29日

BCPとは

第10回 「BCP」

 「BCP」とは、Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」という。

 これは企業が自然災害やテロ、火災、パンデミックなどの危機的な状況(緊急事態)に直面した際、事業資産の損害を最小限にしつつ重要な業務を継続する、または早期に復旧するための方法や手段などを取り決めておく計画を指す。対象組織が行政の場合は「業務継続計画」という言葉が使われる。

 緊急事態は突然発生するもの。特に中小企業の場合は、一度の被災で資産を失ったり、長期間働けなくなる人材が出てしまったりすることで、廃業を余儀なくされることも考えられる。

 そうした状況が起こるのを防ぎ、事業者としての信頼性を高めるため、平常時にBCPを策定しておくことが重要になる。

[BCP策定のメリット]

 BCPを策定することで、企業は以下のようなメリットを得られる。

  • ①緊急事態発生時の迅速な対応
  •  冒頭の繰り返しにもなるが、やはりまずはこれを挙げたい。大きな災害などに直面すると誰しも平静を保つことは難しい。それは経営者も例外ではなく、精神的余裕のない状態で何をするかを一から考えるのと、「事前にこう行動するという計画=BCP」が用意されているのとでは、対応の速度が段違いになるのは明らかだ。
     迅速な対応で事業を継続、または早期に復旧できれば、顧客の流出などを防ぐことができ、経営面での被害を最小にとどめることができる。
     企業がサプライチェーンの一員である場合は、業務停止の影響が全体に広がってしまうため、このことが特に重要となる。2007年に発生した新潟県中越沖地震では、自動車のエンジン部品「ピストンリング」の製造最大手である株式会社リケンの工場が被災し、部品供給の停止を受けて国内の自動車メーカー8社が生産を一時停止する事態になった。
     これはBCPの重要性が国内に広まったきっかけのひとつとも言われている。

  • ②取引先からの信頼
  •  「BCPを策定している企業=緊急時の対策を整えている企業」と認知されるため、取引先から「いざという時でも事業を継続(または迅速に再開)してくれるだろう」という信頼を得ることができる。
     2011年に発生した東日本大震災では、直接地震や津波の被害を受けた企業だけでなく、取引先が被災した影響で倒産してしまった企業が多くあった。帝国データバンクが2016年に行った『「東日本大震災関連倒産」(発生後5年間累計)の動向調査』によると、
    ・社屋の倒壊や津波による浸水被害などの「直接的被害」を受けた倒産:180件
    ・消費マインドの低下や得意先の被災などの「間接的被害」を受けた倒産:1718件
    となっている。間接的被害にはさまざまなものが含まれるが、そのうち「得意先被災による倒産」「仕入先被災による倒産」「連鎖倒産」が合計211件あり、直接的被害による倒産よりも多いことがわかる。
     無論、BCPがあれば被災時の業務停止や倒産を必ず回避できるわけではないが、今後は最低限のリスクヘッジとして、BCPを策定していない企業は取引先に選ばれなくなる時代がやってくる可能性が十分にあると言えるだろう。

  • ③自社の強みや重要業務が明確になる
  •  中小企業庁は、BCP策定・運用の「入門コース(最低限必要な要素を抽出したコース)」において、BCP策定までのフローを以下のように設定している。

    • 1.基本方針の立案
    •  何のためにBCPを策定、運用するのかという基本方針を決める

    • 2.重要商品の検討
    •  最も優先的に製造や販売しなければならない商品・サービス(重要商品)を決める

    • 3.被害状況の確認
    •  災害などにより会社がどのような影響を受けるか想定する

    • 4.事前対策の実施
    •  自社の強み・弱みを踏まえ、緊急時でも必要な経営資源を確保するための対策を検討する

    • 5.緊急時の体制の整備
    •  緊急時における統括責任者及び代理責任者を決める

     入門コースということで、あくまで根幹部分のみを決めていく形だが、このフローだけでも自社の強みや重要業務を改めて確認することができる。それによって平常時の業務内容見直しや、弱みへの対策といった経営改善につなげることも可能になる。

  • ④従業員の命と雇用を守る
  •  被災による倒産や事業縮小を防ぐことで、従業員の雇用を守ることができる。また、災害時の初動対応や出社・帰社できない際の支援方法などを決め、平常時から周知・訓練しておけば従業員(とその家族)の安全や命を守る可能性も高まる。社会的責任を果たすという意味でもBCPは重要だ。

IT-BCP

[IT-BCP]

 現代はビジネスとITが切り離せない関係にあるため、ITにおける対策は特に重要だ。これはIT+BCPで「IT-BCP(情報システム運用継続計画)」と呼ばれる。

 このIT-BCPはBCPの一部であるため、災害時の初動対応をはじめとした業務レベルでの対策との整合性もとっておく必要がある。

 IT-BCPはサイバー攻撃のようなIT特有のリスクも想定して策定を行う。簡単だが例を挙げておこう。

  • 1.機器対策
  •  サーバやデータ保存機器に耐震装置を導入する、長時間の停電時に使う発電機を導入するなど

  • 2.データ対策
  •  データのバックアップを行い、それをクラウドや遠隔地の機器に保存するなど

  • 3.システム対策
  •  予備装置(コンピュータ、サーバなど)を使ったシステムの二重化など

  • 4.ネットワーク対策
  •  バックアップ回線によるネットワーク二重化の導入や、リモートワークシステムの導入など

[国内のBCP策定状況]

 内閣府が2018年に発表した「平成29年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、大企業(業種ごとに、資本金・雇用人数で区分されている)では64.0%がBCPを「策定済み」、17.4%が「策定中」と回答している。

 また、中堅企業では31.8%が「策定済み」、14.7%が「策定中」となっている。中堅企業より規模の小さい「その他企業」の回答データは掲載されていないが、おそらくは中堅企業よりも「策定済み」「策定中」の割合が落ちるものと推測される。

 これにより、大企業を中心にBCPの策定が進んでいることが分かるが、緊急事態における倒産リスクが高い小規模企業にもBCP策定が強く求められるということを考えると、まだまだというところだろう。

 なお、消防庁の「地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果」(2018年)によると、行政においては都道府県レベルで100%のBCP策定を達成しており、市町村レベルでも80.5%がBCP策定済となっている。自然災害大国である日本ではこうした取り組みが必須であるという認識が、民間以上に広がっているようだ。

[熊本地震時の対応事例]

 最後に、内閣府発表の「企業の事業継続に関する熊本地震の影響調査報告書」から、2016年の熊本地震において、あるコンビニ会社が行った対応を紹介しよう。

 2016年4月14日21時26分に最初の地震が発生。熊本県内の各店舗に安否確認のメールを発信、あわせて店舗の状況をリアルタイムで確認できるシステムを使って同県内の大多数の店舗が停電したのを確認し、事態の深刻さを把握した。

 15日の未明には本社の対策本部に責任者が集まり状況を共有、1~3時間ごとに現地とテレビ会議を実施して情報の共有を行い、この現地情報をもとに建築補修などの応援の人員を送り、早期の営業再開のための支援を行った。

 最終的に2店が休業し、うち1店は完全閉店したという。また、同社は最大震度を記録した益城町とのコンタクトをいち早く行って、食糧や水などの物資提供も行っている。

この記事は2019年11月29日時点のものです。

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