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5分で解説!気になるIT用語

2019年10月16日

ペーパーレス1

第7回 「ペーパーレス」

 「ペーパーレス」とは読んで字のごとく、紙をなくすこと。ビジネスにおけるペーパーレス(化)は、会議の資料、契約書といったさまざまな紙媒体を電子文書化することを指す。

 言葉自体は1970年代からあるものだが、日本ではあまり導入が進んでこなかった。しかし、法改正により全ての契約書・領収書の電子保存が可能になったことや、企業の働き方改革で再びペーパーレスが注目されるようになっている。

 ペーパーレスにはもちろん大きなメリットがあるが、デメリットもある。両者の代表的な点をそれぞれ見ていこう。

[メリット]
  • ①印刷コスト、労力の削減
  •  まずはこの点が挙げられる。例えば数十人が集まる会議に数百ページの紙資料を用意する場合、そのコスト(紙代+インク代)と作業を行う人員の労力は大変なものである。
     さらに、その後に訂正しなければならない箇所が発見された場合、再印刷するならば余分に印刷コストがかかるのは明白であろう。アナウンスするだけにしても、周知の方法などが煩雑になるリスクが高い。
     ペーパーレス化することによって、この印刷コスト・労力を一気に削減することができる。また、データの修正も容易で、その共有も紙に比べて効率的に行える点に多大なメリットがある。

  • ②保管コスト、保管スペースの削減
  •  紙媒体の資料を保管する場合、社内の一角を保管室としたり、外部の倉庫などを借りたりする必要がある。
     紙の量が多ければ多いほど、より大きなスペースを確保しなければならず、そのコストも膨大になっていく。また、スペースを確保するだけでなく、ファイリング用品やキャビネットなどの購入費用も必要だ。
     これもペーパーレス化によって解決できる。無論、電子文書データの保存機器やそのセキュリティを確保するためのコストは必要だが、紙媒体を保管するためのコストに比べれば安く済むと想定できる。

  • ③検索、整理のしやすさ
  •  紙媒体の文書保管室から目的のものを探す場合、仮にあいうえお順や年代順で適切なファイリングがされていたとしても、ファイルの場所を探して見つけ、目的のページをめくって探し……、とかなりの労力が発生する。
     もし人為的ミスで「あ」の棚に入れるべきファイルが「ぬ」にでも入っていようものなら、もうファイルを探し出すことすら困難になってしまう。
     電子文書であれば、ファイルのタイトルを検索することですぐ見つけ出すことが可能だ。さらにペーパーレス化の際にOCR(光学文字認識)処理を施しておけば、手書きも含めた文書内テキストの検索まで可能になり、瞬時に目的の箇所にアクセスできるようになる。
     また、文書の整理やメンテナンスの労力も紙媒体に比べればはるかに楽と言えるだろう。

  • ④セキュリティ強化、リスク回避
  •  紙媒体は誰にでも開けるため、悪意ある人物が手にすれば、窃盗や内容の改ざんといったことが可能になってしまう。ペーパーレス化によって電子文書にすれば開く際にパスワードをかけることができ、ファイル保管場所のアクセス権限も設定することも可能だろう。
     また、人為的なものでなくても、紙媒体には事故・天災による紛失や、経年劣化による読み取り不能(=事実上の消失)といったリスクが存在するが、これも電子文書であれば経年劣化は存在せず、クラウドサーバなどにバックアップを取ることで、事故の際の紛失も防ぐことができる。

  • ⑤ワークスタイルの変革(働き方改革)
  •  紙媒体と違い、電子文書はクラウドサーバなどに保存することで、どこからでもアクセスすることが可能だ。
     これにより、例えば出張先や遠隔地で社員が資料を持ってオンライン会議に参加する、災害発生時に出社せず業務を行う、といったことができる。また、前述の検索のしやすさをはじめとした業務効率化、ひいては生産性の向上という効果も期待できるだろう。

  • ⑥環境保全
  •  日本製紙連合会によると、2017年の日本の紙・板紙生産量は世界3位。国民一人当たりの消費量は世界7位となっている。
     日本経済新聞の2019年1月の記事で、国内流通量は7年連続減少の見通しとあることから、おそらく2019年の生産量も下がるものと思われるが、依然世界トップクラスであることには変わりないだろう。
     紙を消費するということは、すなわち森林を伐採するということであるため、環境への配慮は企業にとって重要な課題となる。ペーパーレスによって可能な限り紙の消費量をおさえることで、環境問題に取り組んでいるという姿勢を示すことができるのだ。

ペーパーレス2

[デメリット]
  • ①ITリテラシーによって使い勝手が異なる
  •  ITに不慣れな場合、ファイルを開くための端末の扱いや電子文書の見方に苦労し、紙媒体に比べて使い勝手が悪いと感じてしまう。
     年配のベテラン社員が多い企業の場合、これが原因でペーパーレス化が進まないというケースもあるようだ。そうした社員に向けた研修などを行う、可能な限り使いやすく簡単なシステムを採用する、といった取り組みが必要になるだろう。

  • ②視認性が端末に左右される
  •  上述の使い勝手にも関わる点になるが、電子文書の文字の大きさなどは端末のサイズや解像度に応じたものとなるため、小さいタブレットやスマートフォンを使うといちいち拡大しなければ文字が見えないといったケースが生じうる。
     また、複数の資料を同時に広げて見ることも困難なため、このような使い方が主であれば、紙媒体に頼ることになると想定される。

  • ③システム・ネットワークの影響を受ける
  •  電子データであるため、当然ながら停電やシステム障害、ネットワークの異常などが発生すると文書にアクセスできなくなってしまう。
     もし障害から復旧できずバックアップも取っていない場合、全ての文書が消失するという最悪の事態も発生しうる。電子文書に限らず、コンピュータを扱う以上必ずつきまとうリスクなので、常に対策を取っておきたい。

  • ④法律上電子化できないものがある
  •  ペーパーレスに関する法律は、法令で保管が義務付けられていた文書の電子データ化を認める「e-文書法」、国税関係の帳簿を電子データとして保存する方法を定めた「電子帳簿保存法」の2つがある。
     2015年の電子帳簿保存法の改正で全ての契約書・領収書の電子保存が可能になり、さらに2017年の改正ではスマートフォンで撮影した領収書データも認められるようになった。
     規制緩和は確実に進んでおり、国もペーパーレスを推奨していると言えるが、電子化の対象外となっている文書もまだまだ存在する。例えば宅建業法における重要事項説明書や賃貸契約書、マンション管理業務委託契約書は電子化不可となっているのが現状である。

【海外のペーパーレス事例】

 それでは最後に、海外のペーパーレス事例を紹介しよう。行政のデジタル化を推進し、世界最先端の「電子国家」として知られるのが北欧のエストニア共和国だ。いわゆるバルト三国の一つで、人口は約130万人だが、そのほとんどが国民IDカードを保有している(15歳以上の国民に電子IDを義務化)。

 このIDカードは1枚で運転免許証や保険証、病院の診察券、キャッシュカード、交通機関の乗車券などの機能を持っており、さまざまな行政・公共サービスを利用できる。特に行政サービスはほぼ全てがペーパーレス化されており、オンラインによる電子認証と署名でさまざまな申請が完結する(結婚と離婚、不動産売却の手続きのみ例外)。

 2005年の地方選挙では、世界初となる全国規模のインターネット投票が実施された。

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この記事は2019年10月16日時点のものです。

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