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5分で解説!気になるIT用語

2019年10月02日

スマート農業1

第6回 「スマート農業」

 「スマート農業」とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)などの先端技術を活用して、より高品質な作物の生産や、省力化・軽労化を実現する新たな農業のことを指す。

 日本の農業は、従事者の高齢化・後継者の不在による労働力不足や、食料自給率の低下などが大きな問題となっているが、スマート農業はこれらを解決し、産業として発展させていくための取り組みとして注目されている。

 それでは、現場ではどのような取り組みが行われているかを見ていこう。

①ロボット技術の活用

 当たり前の話だが、元々農業は全て人の手で行われてきた。それが機械の登場により様変わりした。例えば鍬を使って畑を耕していたのが、耕運機で一気に行えるようになったり、作物の運搬がトラックで効率的にできるようになったりした。

 とはいえ、機械を動かすのは基本的に人間自身であり、また繊細な作業は人の手と判断が必要になっていた。しかし現代では、このような繊細かつ特殊な作業までも、ロボット技術により自動化する取り組みが進められている。

 以下に、現代のロボット技術を活用した代表的なケースを紹介しよう。

  • ・ドローンを使った農薬散布
  •  農薬の散布作業はかなりの重労働。高齢者、夏場といった条件が重なればなおさらである。これまでは人力以外に無人ヘリコプタを使う方法があったが、「コストが非常に高い」「小規模面積には対応できない」など、さまざまな問題があった。そこで注目されているのが、ドローンを使った農薬散布だ。ドローンは小型で機動性が高いため、小規模面積や複雑な地形にも対応でき、コストもヘリコプタに比べると非常に安い。
     また、低空飛行で散布をするため、薬剤が飛散してしまうリスクが低く、飛行音も小さいので周囲への配慮にもなる。個人でドローンを操作するには必要な座学・実技を受講して一般社団法人「農林水産航空協会」からの認定を受ける必要があるが、そのサポートや薬剤散布の代行を行っている企業もある。

  • ・ロボットによる作物の収穫
  •  収穫は熟度の見極めの判断や、傷つけないように作物を取るといった繊細な作業だが、それもロボットが行えるようになってきている。例えば果物の収穫ロボットなら、障害物や路面の状態をセンサで検知しながら自律走行し、カメラで作物の状態を認識して取るべき熟度のものを判断、アームを使って傷つけずに収穫、というような仕組みとなっている。特定の作物だけではなく、「きゅうりとアスパラガス」というような複数の作物収穫に対応しているロボットも出てきており、将来性の高い分野と言える。

  • ・農業機械のロボット化による省力・効率化
  •  ここで言う「農業機械」とは、従来使われていたトラクタなどのこと。従来の農業機械は人間が直接動かしていたわけだが、それをロボット化し、無人で作業を行えるようにする取り組みが進められている。例えばトラクタなら、GPS制御による自動走行をすることで省力化が実現でき、また夜間走行も可能になったことで、作業スケジュールの効率化にも繋がる。さらに、直接人間が乗り込んで運転するよりも簡単に操作できるため、若い後継者や新規就農者の確保という効果も期待されている。

②情報通信技術(ICT)の活用

 ICTとは、「Information and Communication Technology」の略語で、日本語では「情報通信技術」という。IT(=Information Technology、情報技術)に通信やコミュニケーションの要素を加えたものとなる。

 幅の広い言葉だが、どのような取り組みが行われているか紹介しよう。

  • ・熟練農業者の技術継承
  •  熟練農業者の高い生産技術やノウハウは非常に貴重なものだが、その習得には長い時間がかかり、また後継者不足のために継承されることなく失われてしまう恐れがある。そのため、これらの技術やノウハウをデータ化し、活用する取り組みが進められている。例えば、経験や勘で行っていた技術を分析して形式知(文章化、数式化して説明できるようにした知識)とすることができれば、後継者や新規就農者は短期間でその技術を習得することが可能となる。
     さらには、知的財産化することで、技術を提供した熟練農業者も対価を受け取ることが可能だ。また、こうした熟練者の技術のデータ化・分析は、前述のロボットによる作物の状態認識などにも活用される。

  • ・業務の最適化
  •  過去のデータや気象データなど、さまざまなデータを集積・分析して、適切な圃場(ほじょう、畑など作物を育てる場所のこと)管理を行ったり、栽培計画を立てやすくしたりする取り組みも進められている。例えば、圃場各地の日照データや土の水分量、作物の状態などを一括管理できれば、適切な施肥を行ったり、過去のデータと照らし合わせて適切な収穫時期の予測を立てたりすることが可能になる。さらに、そうした施肥・収穫作業などをロボットに任せれば、大幅な省力化が実現できる。

スマート農業2

③AIの活用

 AI(人工知能)の活用は、これまで挙げてきた事例にも深く関係している。例えば熟練農業者から提供されたデータを分析し、形式知とするのはAIの仕事だ。技術の進化により、これまでマニュアル化できなかったことや、高度な作業にも対応できるようになったのである。以下にその取り組みを紹介しよう。

  • ・作物の状態管理
  •  蓄積された大量のデータ(ビッグデータ)をAIが分析して、それぞれの特徴を学習、現場で撮影された画像から一つひとつの状態を判別する。代表的な活用例が、前述の作物収穫ロボットだろう。熟練農業者の技術・判断のデータ化、カメラを使って一つひとつの作物を認識する技術を合わせて、作物それぞれの状態を判別するわけだ。また、ドローンなどで空中から撮影した作物を判別、圃場全体の管理を行うというものもある。

  • ・病気・害虫の発見と対処
  •  病気・害虫の発生を検知したり、対処したりすることもできるようになってきている。例えば、ドローンが圃場を巡回撮影し、ビッグデータから分析・学習した特徴を照らし合わせて、病気や害虫が発生していないかを確認するといった形だ。害虫を発見した場合には、その箇所にだけドローンが農薬を散布するという技術も開発されている。また、発生時の気候・温度・湿度などのデータを蓄積していくことで、次の発生予測も立てることが可能になる。

     上述の作物の状態管理もそうだが、こうした技術を活用すれば経験の浅い人でも熟練者並みの対応が可能となるため、今後の新規就農者を獲得していく上でも大きな助けとなる。

     農林水産省のホームページでは多くの取り組み事例が掲載されている。ロボットなどを開発している企業の名前も確認することができるので、興味があればそちらもご覧いただきたい。

【海外のスマート農業事情】

 スマート農業は、海外ではアグリカルチャー(agriculture、農業)に、スマートやテクノロジーをかけ合わせて「スマートアグリ」「アグテック」などと呼ばれ、日本に先がけて導入・成功している国も多い。代表的なのがアメリカとオランダだろう。

 アメリカは元々世界一の農業大国。飛行機で広大な農地を飛び回り、上空から農薬を散布するような映像を見たことがある方も多いだろう。スマート農業化にも非常に積極的で、前述したドローンを使っての作物の状態管理や農薬散布、土壌データの収集、病気・害虫の検知などが行われている。

 オランダは国土面積でいえば日本の九州程度。風車が有名なように風が強く、曇りの日(日照時間に大きく影響する)も多い。しかし、農産物輸出額はアメリカに次ぐ世界第2位を誇る。その躍進の一翼を担っているのがスマート農業だ。例えば、オランダの農業はハウス栽培が多いが、その温度や湿度などを管理し、常に作物にとって最適な状況を保つ環境制御システムを導入することで、徹底的な生産効率化が行われている。

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この記事は2019年10月02日時点のものです。

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